それ、相続対策ですか?
相続対策ということで、不動産会社さんの提案を受け、空いている土地に、銀行融資を利用しながら、賃貸アパートを建てるケースがあります。
更地の土地を相続するよりも、賃貸アパートが建っている状態で土地とアパートを相続する方が、相続税を計算する元になる評価の金額が下がるケースが多いからです。
さらに、銀行からの融資の残債があると、その分を相続税の評価額からマイナスできるという仕組みもあります。
ただ、これは、「相続」対策でしょうか?私には、「相続税」対策であるとしか感じられません。
不動産は立地がすべて!
「相続」対策と「相続税」対策。
言葉としては漢字一文字の違いですが、大きな違いにつながります。
相続税対策は、相続税、という短期的な部分にしか視点がない対策。
相続対策は、ご家族がその後末永く円満に過ごせるような配慮をする対策。
上記のような違いがあると、私は考えています。
その点で、アパートを建てるのは、どちらかというと、「相続税」対策であると私は感じております。
理由としては、以下です。
(1)複数の相続人がいた時に、土地やアパートは分けにくい。
(2)アパートが建っている場所によっては、相続人の負担にしかならない可能性がある。
例えば、相続人が3人いる場合に、相続時の財産が、少額の預貯金とご自宅、そして賃貸アパートだとしたら、この3人は円満に相続できるでしょうか?
もし、賃貸需要が弱い場所に建てた賃貸アパートで、「売却価格<銀行の融資残債」のような場合、誰が引き継ぎたいと思うでしょうか?
相続税対策で建てた賃貸アパートが、最終的に失敗するというのは、相続時に表面化するケースが多いと思います。
生前であっても、賃貸需要が弱いことで、「受け取る賃料<毎月の返済額」という状態が続き、ストレスを抱えることにもつながりかねません。
このようなケースは失敗だと感じますが、人口流入が多い場所、賃貸需要が高い場所で、「受け取る賃料>毎月の返済額」になるのであれば、悪くないと感じます。
低リスクでできる対策
では、「相続」と「相続税」両方の対策を、不動産で行うことは難しいのでしょうか?私は2点あると考えています。
1点目は、賃貸需要の強い場所にある区分マンションを所有して賃貸に出すことです。
区分マンションであれば、賃貸アパートを建てるよりも費用を抑えることができ、例えば3人の相続人がいる場合に、3部屋保有していれば、1部屋ずつ分けるなどの対策を考えやすくなります。
賃貸で貸している部屋であれば、相続税の評価額も下げられるので、相続税対策にもつながります。
2点目は、不動産小口化商品を保有することです。
商品によって、最低投資金額が100万円~1,000万円など幅広いですが、一棟ビルなどの一部を保有することになり、相続税対策につながります。
相続が起きた後も、相続人3人いる場合に、900万円分保有していれば、300万円ずつ分けることができるなどの相続対策にも利用しやすいです。
不動産は、相続税対策には有効ではありますが、相続対策という面で分けにくいというデメリットもあります。
安易に多額の借入を行って相続税対策のためだけにアパートを建てず、相続人が引き継いだ後、どんなことが起き得るのか?まで想像することが、失敗しにくい対策になると私は考えています。
FPオフィスケセラセラ横浜
斎藤 岳志 >>プロフィールをもっと見る
某百貨店に3年ほど勤務。色々な方との触れ合いを通じて、サービス・接客・対人関係の基礎を身につける。
百貨店在職中に、ファイナンシャルプランナーの勉強を始め、資格取得をしたことをきっかけに、数字を扱う仕事に興味がわき、転職して、経理・税務という職種を経験。自身の強みとなっている。
また、プライベートな部分でも、株式投資に始まり、信用取引や商品先物取引、投資信託やFXなど、投資と名のつくものはだいたい経験し、その経験を経てくる中で、一番自分の性格とうまの合った不動産投資を2007年にスタートして以来、自分の資産運用に関しては、中古マンション投資を中心に金融資産の運用と不動産を組み合わせたバランスを意識して取り組んでいる。
【所有資格】
CFP
相続診断士
終活アドバイザー