不動産がインフレに負けない理由

2022年10月、日本銀行が金融政策決定会合で「金融緩和の維持」を決定しました。

一方、物価に関しては、見通しを引き上げて、前年比2.9%と公表しました。

賃金の上昇や需要回復などの経済的なプラス要因というよりは、円安による輸入品の価格上昇が、この見通しには影響を与えています。

これからインバウンド需要などで、経済回復が見込まれる可能性はありながらも、まだまだ需要不足で経済が上向いていない状況を加味しての判断だと思います。

この状況が、どのような状況なのか、改めて考えてみます。

分かりやすく、端的に言い表すと、金利は限りなく0%に近い状態を維持しつつ、モノの値段は約3%あがりますよ。ということです。

つまり、10,000円を銀行に預けておいたとしたら、1年後、手元には変わらず10,000円がある状態のままで、モノの値段は10,300円になるというイメージです。

ということは、お金をいわゆる「元本保証」の所に置いておいたままであれば、1年後、同じものは買えなくなってしまう、ということになります。
上記の例で言えば、同じものを買うにしても、1年後は300円足りなくなるということです。

そういう事態に陥らないように、政府としては、3%以上の賃金上昇を企業に促しているというのが、昨今の状況だと感じています。
今回の発表を踏まえれば、2.9%以上、手元にお金が増える状態にないと、今までと同じような生活を維持できなくなるからです。

そこで、検討され始めているのが、「資産所得倍増プラン」です。

どのような内容、骨子になっていくかの全体像は、2022年10月時点ではまだ分かっていませんが、物価の見通しを上回ることが難しい預貯金からお金を動かして、金融資産の運用などを通じて、物価上昇に負けない家計、そして、将来への備えをしてもらいたい、というのが、プランの意図ではないかと私は考えています。

3%を上回る資産運用、資産形成ができれば、物価の上昇見通しを上回ることができ、1年後にモノの値段があがっていたとしても、同じモノを買って生活ができる、というイメージです。

流れとしては、まずは働いて得る収入を増やすことで物価の上昇に負けないようにする、その次に、金融資産の運用を通じて、お金に働いてもらいながら物価上昇に負けないようにする、というイメージです。

そのような状況にある中で、不動産投資、大家業のような、不動産という資産は、物価上昇との兼ね合いで、どういう影響を持ってくるのでしょうか?

これには、2つのポイントがあると私は考えています。

土地価格の上昇に伴い、持っている不動産の価値があがる

1つめは、地価と言われる土地の価格などの上昇に伴って、持っている不動産の価値があがる、という側面があります。ただ、この1つ目は、理論的には成り立つのですが、実感としては湧きにくいものとなってしまいます。

不動産が、金銭的な価値として、目に見えて分かるのは、売却した時だからです。

つまり、マイホームとして不動産を所有している場合、地価の上昇などで価値が上がっているとニュースなどで見聞きしたりしたとしても、家計に直接の恩恵をもたらしてくれることにはならないのです。(持っている不動産を担保にお金を借りるような場合は、担保価値が上がることで、借りられる金額もあがるケースは考えられます)

賃貸用の不動産を持っている場合、受け取る賃料を物価の上昇に合わせて変えていく

2つめは、賃貸用の不動産を持っている場合に、受け取る賃料を物価の上昇に合わせて変えていく、という側面があります。
金融資産の場合も、株式などであれば、配当として受け取れる側面はあります。ただ、配当に関しては、いくら受け取れるかをあなたが決めることはできません。

大家として受け取る賃料は、あなた自身が決められる、というのが、金融資産の運用との大きな違いです。住まいの賃料に関しては、遅効性があると言われています。
これは、賃料は、賃金の上昇などに遅れて、上がる傾向がある、という意味合いです。

たしかにその通りで、賃金があがり、手取りが増えるような状況にならないと、借主さんが払える賃料もあげにくいというイメージです。

分かりやすく言えば、税金などは加味せず伝えますが、仮に賃金が3%あがれば、その分お財布の中も3%増える。その結果、賃料が3%あがっても払ってもらえる。
このような流れになるので、賃料は遅効性の指標として捉えられています。

つまり、不動産の場合、物価の上昇、インフレの状況を踏まえて、借主さんから受け取る賃料を上げることがしやすいのです。

例えばですが、更新頂くタイミングで、いきなり3%は難しいにしても、半分の1.5%のアップをお願いするなどは、選択肢としてありかもしれません。

私個人的には、退去が生じたタイミングで、次の入居者さんを募集する時に、賃料を物価上昇も踏まえた価格に上げるというのが、一番良いのではないか、と考えています。

上記のような状況が、日本の世の中に、いつ、どんなタイミングで訪れるかは分かりませんが、物価の見通しが上がることは公表されています。

一方で、金融緩和政策もあり、金利は低く抑えられています。

このような状況下にあっては、お金を預貯金においておくだけでなく、賃貸不動産のように、将来的に定期安定収入の上昇を見込める可能性のあるものに、お金の置場を変えること。つまり、お金を不動産のような実物資産というモノに変えること。

あるいは、低金利を有効に活用して、賃貸不動産を、融資を利用しながら購入し、将来的な賃料アップを見据えながらのインフレ対策として保有する。
そんな選択肢を考えられるのが、賃貸不動産であり、インフレに負けにくいのではないか、と私は考えていますが、あなたはどう思いますか?

FPオフィスケセラセラ横浜
斎藤 岳志 >>プロフィールをもっと見る

某百貨店に3年ほど勤務。色々な方との触れ合いを通じて、サービス・接客・対人関係の基礎を身につける

百貨店在職中に、ファイナンシャルプランナーの勉強を始め、資格取得をしたことをきっかけに、数字を扱う仕事に興味がわき、転職して、経理・税務という職種を経験。自身の強みとなっている。

また、プライベートな部分でも、株式投資に始まり、信用取引や商品先物取引、投資信託やFXなど、投資と名のつくものはだいたい経験し、その経験を経てくる中で、一番自分の性格とうまの合った不動産投資を2007年にスタートして以来、自分の資産運用に関しては、中古マンション投資を中心に金融資産の運用不動産を組み合わせたバランスを意識して取り組んでいる。

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