勤務先に退職金制度がない場合、どんな対策が必要ですか?

生涯収入と生涯支出を書きだしてみる!

「退職金で住宅ローンを完済する!」
「老後資金の原資として退職金を活用する!」

厚生労働省が公表している「令和5年就労条件総合調査」によると、大学卒で、勤続35年以上の方の退職金の平均額は、約2,000万円と公表されています。

大手企業などでは、この数字も現実味があるのかもしれませんが、日本で大多数を占める中小企業においては、 実感とは遠いのではないか、と感じます。

中小零細企業の中には、そもそも退職金制度を設けていないという企業も多いようにも思います。

そのような企業にお勤めになられている場合、冒頭のような願いをかなえることはできません。

退職金制度がない場合に、おススメしたいこと。
それは「生涯収入」と「生涯支出」を書き出してみることです。

例えば、

・50歳
・年収は500万円で65歳まで働く見込
・公的年金は年に200万円受け取れる見込

この場合、100歳まで生きるとした場合、一生涯で受け取る収入は、

「500万円×15年+200万円×35年=1億4,500万円」 となります。

一方の支出に関して、

・今の生活費が年480万円
・65歳以降が年300万円

 と、想定すると

「480万円×15年+300万円×35年=1億7,700万円」
収入と支出の差額は「▲3,200万円」となります。

この計算で出た金額に、今保有している金融資産を加味します。

仮に現時点で、金融資産が1,500万円ある場合、

「▲3,200万円-1,500万円= ▲1,700万円

1,700万円を、65歳までの15年間で準備する必要があると考えられます。

この金額はあくまでも目安ですが、目標の1つとして考えておくと、
資産運用などで目指す方向性の羅針盤のような役割を果たしてくれるのではないか、と思います。

税制優遇のある制度を検討してみる

前項で不足する金額の目安が見えてきたら、退職金に頼れない現状を踏まえて、資産運用などで備えを作っていく必要があります。

資産運用に関する情報はネットや動画などに様々ありすぎることで、実際に自分は何をやれば良いのか分からない、 と悩まれる方も多いことと思います。

もしあなたがそうであれば、私がお伝えしたいことは、老後資金準備に備えて「税制優遇のある制度」を活用することを最初に検討して下さい、ということです。

具体的に言えば「イデコ」や「NISA」のような制度を使って、資産運用を行うのが良いのでは、ということです。

国の立場を考えてみて下さい。国の財政は、税収がメインです。
国としては、税収を上げられれば財政が安定し、健全な国家財政の運営ができることになります。

そのような立場にもかかわらず、イデコやNISAという制度は、いくつかの制約はあるにせよ、税制面での優遇措置が講じられています。

税制面での優遇措置。これが意味することは、
「税金には目をつぶるから、この制度を活用して、みなさん、自助努力で準備して下さい」
というメッセージではないか、と私は捉えています。

もちろん、制度を活用したからと言って、必ずしも利益があがる保証はありません。

ただ、金利が上がり始めているとは言え、まだ低金利の現状を加味すれば、お金を、利益の税金が非課税になる制度の中で運用することのメリットは大きいのではないか、と私は考えています。

だからこそ、退職金制度の有無にかかわらず、老後に不足すると見込まれる資金準備としては、まず税制優遇のある制度を活用することが 良いのではないか、と私は考えています。

自助努力、その他収入も考えてみる

不足額の目安が分かり、税制優遇制度を活用して、備えることを始めた後、保険や不動産など、他の対象での資産運用、資産形成を検討するのが良いのではないか、と私は考えています。

保険も不動産も資産運用として使う商品として、相性が合えば良いと思います。ただ、税制の優遇面やコストなどの面で劣る部分があるのは否めません。

そのため、イデコやNISAの次に検討するのが良いのではないか、という意味合いです。

また、別の視点も考えてみると良いのでは、と思います。

それは、相続です。

期待し過ぎるのは良くないですが、ご両親から、もしかしたら、いくばくかの資産を、相続などを通して、譲り受けることができるかもしれません。

お金目的で仲良くするのは本末転倒ですが、ご両親を想い、ご家族円満でいることが、結果として、相続などでご家族が仲違いしない秘訣、財産で揉めたりしない秘訣ではないか、と私は考えています。

スムーズに相続で資産などの引継ぎができることで、結果的にあなたの家計や老後資金にプラスに働いてくれる可能性もあるのです。

勤務先に退職金制度がない場合の対策

  • 「生涯収入」と「生涯支出」を書き出してみる
  • 「イデコ」や「NISA」のような制度を使って、資産運用を行う
  • 保険や不動産、相続などを考える

まとめ

退職金制度がない場合の対策、というご質問でしたが、考えを巡らせていくと、退職金の有無に関係ない答えに思い至ることとなってしまいました。

結論としては、退職金の有無にかかわらず、「あなたの家計にとって、備える必要がある金額はいくらか?」

ここを出発点に考えて、税制優遇の制度を活用したりしながら、老後資金などの対策を考えていくことが必要だと私は考えています。

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斎藤 岳志 >>プロフィールをもっと見る

某百貨店に3年ほど勤務。色々な方との触れ合いを通じて、サービス・接客・対人関係の基礎を身につける

百貨店在職中に、ファイナンシャルプランナーの勉強を始め、資格取得をしたことをきっかけに、数字を扱う仕事に興味がわき、転職して、経理・税務という職種を経験。自身の強みとなっている。

また、プライベートな部分でも、株式投資に始まり、信用取引や商品先物取引、投資信託やFXなど、投資と名のつくものはだいたい経験し、その経験を経てくる中で、一番自分の性格とうまの合った不動産投資を2007年にスタートして以来、自分の資産運用に関しては、中古マンション投資を中心に金融資産の運用不動産を組み合わせたバランスを意識して取り組んでいる。

【所有資格】
CFP
相続診断士
終活アドバイザー
資産形成コンサルタント 

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