相続登記って、なぜ必要なの?

2024年4月から、相続登記が義務化されます。

約1年半後に迫ったタイミングで、法務省が発表した調査結果によると、全く知らない・よく知らない、を合わせると、約66%、3人に2人は、義務化になることを、分かっていないという現実

所有者不明の土地や部屋が増え、問題を引き起こさないようにするための義務化の措置にも関わらず、なかなか浸透しないのは、相続登記をしないことによって、どういうことが引き起こされるかが、イメージしにくいことも背景としてあるのではないか、と感じます。

では、不動産を相続する際に、登記をしないことによって引き起こされる問題には、どのようなことがあるのでしょうか?

例をあげて考えてみます。

Aさんがお亡くなりになり、Aさん名義のまま、不動産が放置されたとします。

すると、売りたいとなっても、売主がお亡くなりになっており存在しないので、そのままの状態では、誰が所有者か分からず、買い手が仮に現れたとしても売却ができません。

相続人は、BさんとCさんの2人だけだとします。

この時点であれば、BさんかCさん名義で登記をする、あるいは、2分の1ずつの共有にして、Bさん、Cさんそれぞれが納得した状態であれば、売却を行うことができます。

この状態であれば、手放す判断なども、まだしやすいと思います。

ただ、その後売却しないまま時が流れ、相続登記をしないままCさんがお亡くなりになり、相続が発生したとします。

Cさんの相続人は、DさんEさんFさん3人だとすると、先程の、Aさんの不動産は、その時点で、法定相続分で考えると、Bさんが2分の1、DさんEさんFさんが6分の1を保有することとなり、所有者は4人に増えることになります。

そうなると、Aさんの不動産をどうすれば良いのかの話し合いも、登場する人数が増えることで、まとまりにくくなってしまいます。

さらに、そのまま放置して、Bさんに相続が発生し、相続人が3人だとすると・・・

このように、相続登記をせず、不動産を放置しておくと、所有者としての権利を有する登場人物がどんどん増え、収拾がつかない事態に陥りかねません。

空き家の増加に伴って、相続登記がされていない実家の問題がニュースなどでは取り上げられることが多いですが、この相続登記の問題は、実家に限った話ではありません

不動産投資、大家業にとっても、影響のある話です。

例えば、あなたの父親が、賃貸物件を持っていて、賃料収入を得ていたとします。その父親に相続が発生した時に、相続人が仮にあなたとお姉さまの2人だとします。

遺言、話し合いなどで、どちらかの所有にできれば良いのですが、どうするのかが決まらないまま、相続登記を放置したとします。

所有者が誰か、はっきりしないままの状態と言い換えた方がイメージが湧きやすいかもしれません。すると、困るのは誰でしょうか?
それは、部屋で住まわれている賃借人様です。

相続があったことを知らされていなければ、貸主は生前のお父様のままだと思い、賃料の支払いも、お父様宛に払っていると考えるのが自然です。
それが、実は、所有者が亡くなられて変わっていた。それなのに、賃貸借契約も相続発生後、賃貸人の変更がされていない。

そうなると、「私は、何かあった時、誰に連絡をすれば良いの?」と、賃借人様はなってしまいます。

賃貸管理会社に委託をしていれば、賃借人様に不都合が直接生じることは、当面ないかもしれませんが、その場合でも、今度は困るのが賃貸管理会社です。
部屋や物件に何かあった場合、連絡する窓口は誰になるのでしょうか?

他にも、いろいろな不都合ケースが考えられますが、一番イメージしやすいケースを、ご実家や賃貸物件の場合で、それぞれ上げてみました。

どうしても、引き継ぎたくない不動産であれば、相続登記をしたくないという事情があるのであれば、放置ではなく、相続放棄をするという選択肢もあります。

不動産は、金融資産とは違い、分割がしにくいからこそ、相続の際は、悩みの種になる可能性も秘めた資産です。
相続税という視点で言えば、金融資産を保有しているより節税につながる可能性はありますが、生前に準備を整えておかないと、相続の面では、むしろお荷物扱いになりかねません。

相続人同士の仲違いの原因になる可能性さえ秘めています。

その結果が、相続登記をしない、放置のままにしてしまうという問題にもつながる可能性があるのです。

ご実家にせよ、賃貸物件にせよ、資産に不動産がある場合。

相続税の視点だけでなく、相続が発生した時に遺された相続人にとって、保有したくない、登記したくない、という想いを持たれないような対策を施しておくことが大切なのではないでしょうか?

そして、そのためには、生前の元気なうちに、相続人となる方と、不動産の引き継ぎ方、処分の仕方など、相続発生後の不動産の扱いについて、コミュニケーションをとり、相続人となる方同士の合意を得ておくことが大切になる。

私はそのように考えていますが、あなたはどのように思いますか?

FPオフィスケセラセラ横浜
斎藤 岳志 >>プロフィールをもっと見る

某百貨店に3年ほど勤務。色々な方との触れ合いを通じて、サービス・接客・対人関係の基礎を身につける

百貨店在職中に、ファイナンシャルプランナーの勉強を始め、資格取得をしたことをきっかけに、数字を扱う仕事に興味がわき、転職して、経理・税務という職種を経験。自身の強みとなっている。

また、プライベートな部分でも、株式投資に始まり、信用取引や商品先物取引、投資信託やFXなど、投資と名のつくものはだいたい経験し、その経験を経てくる中で、一番自分の性格とうまの合った不動産投資を2007年にスタートして以来、自分の資産運用に関しては、中古マンション投資を中心に金融資産の運用不動産を組み合わせたバランスを意識して取り組んでいる。

【所有資格】
CFP
相続診断士
終活アドバイザー
資産形成コンサルタント 

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