インフレ率を超える賃上げ。
2023年の年頭に、首相が経済界に要請した内容です。
為替レートや原材料価格の高騰などの影響が、徐々に日本国内にも及んできています。
特に2022年後半からは、私たちの生活に欠かせない食料品などの日用品にも、値上げの波が押し寄せています。
そんなインフレ傾向がある中で、不動産には、どういう影響が及んでくるのでしょうか?


この影響を、賃上げとの兼ね合いで、考えてみようと思います。
結論から先に伝えると、賃上げは、巡り巡って、不動産価格面での価値の維持につながると私は考えています。
つまり、インフレと共に、賃上げも伴うことで、不動産価格は維持されることにつながる、というイメージです。
どういうことか?
先日、ユニクロを展開するファーストリテイリングが、年収で、最大40%近くあげるとの報道がありました。
なかなか、ここまで思い切った賃上げを行える企業も少ないとは思いますが、このファーストリテイリングを例にして考えてみます。
令和3年9月に国税庁が公表した調査結果によると、1人あたりの平均給与は約430万円と報告されています。
仮に、この年収430万円の人が、2023年1月時点の変動金利、0.4%で、35年の住宅ローンを組んだ場合、最大で、いくらまで借りることができるでしょうか?
答えは、約4,900万円です。借りられる金額と借りて良い金額は異なりますが、他に借入がなかったとした場合、このケースであれば、5,000万円近くのマイホームの購入が可能です。
これから先、金利があがるのか、あがるとしたらどのくらいまであがるのか。不確定な部分はありますが、インフレに伴って、仮に3%まであがったと仮定します。
ただ、賃上げに伴って、先程のファーストリテイリングさんのケース、年収40%アップとして考えてみます。
430万円が40%アップすると、年収は約600万円となります。
では、この年収600万円の人が、金利3%で、35年の住宅ローンを組んだ場合、最大でいくらまで借りることができるでしょうか?

答えは、約4,500万円です。
最初の例と、金利の差は2.6%、年収では170万円の差がありますが、住宅ローンで借りることができる金額は、約400万円のマイナスでとどまっています。
つまり、年収が変わらないままで、金利だけが上がってしまう状況であれば、借りられる金額も少なくなり、購入できる物件の価格も下がります。

しかし、金利だけでなく、賃上げも進んでいけば、上がった年収と金利との関係にもよりますが、借りられる金額も増えていくのです。
この賃上げが進む状況が浸透すれば、インフレ下で金利が上昇したとしても、不動産の価格という面での資産価値も下がりづらくなる、と私は考えています。
インフレになるとモノの値段はあがります。
これは、私たちの日常に身近な食品などだけでなく、資産としてのモノ、株式や不動産も同じです。
とは言え、不動産は、日用品と異なり、値段が高い買い物になるので、ローンを利用して購入するケースが多いです。
そのため、不動産価格が上がったとしても、年収のアップが追い付かないと、金融機関から希望額の融資を受けられず、希望する物件を買えない、という事態が生じかねません。

売りたい人にとっても、買って頂ける対象者が減ってしまい、価格面で、インフレによる資産価値のアップを感じにくくなる可能性があります。
購入希望者が買える価格にまで、売却価格を下げないといけない。

そんなことにもなりかねません。
不動産は融資ありきなので、価格が金利に左右される、と良く言われます。
ただ、それは、購入する人の年収が変わらない前提での話だと私は考えています。
金利が上がっても、賃上げが進み、年収も増えれば、たとえ金利が上昇したとしても、物件価格は維持されて、価格面での資産価値は維持される。
インフレ下にあっては、首相の言うように、賃上げを進めていくことが、不動産市場という面でもプラスの影響をもたらす、と私は考えていますが、あなたは、どのように思いますか?

FPオフィスケセラセラ横浜
斎藤 岳志 >>プロフィールをもっと見る
某百貨店に3年ほど勤務。色々な方との触れ合いを通じて、サービス・接客・対人関係の基礎を身につける。
百貨店在職中に、ファイナンシャルプランナーの勉強を始め、資格取得をしたことをきっかけに、数字を扱う仕事に興味がわき、転職して、経理・税務という職種を経験。自身の強みとなっている。
また、プライベートな部分でも、株式投資に始まり、信用取引や商品先物取引、投資信託やFXなど、投資と名のつくものはだいたい経験し、その経験を経てくる中で、一番自分の性格とうまの合った不動産投資を2007年にスタートして以来、自分の資産運用に関しては、中古マンション投資を中心に金融資産の運用と不動産を組み合わせたバランスを意識して取り組んでいる。
【所有資格】
CFP
相続診断士
終活アドバイザー
資産形成コンサルタント